中小企業や個人事業主に適した資金調達方法と言われる「ファクタリング」は、経営状況や会社規模を理由に融資を受けづらい企業にとっても、資金繰りの大きな助けになる可能性があります。
しかしファクタリングは融資と比較して事業者向けの資金調達方法として浸透しているとは言い切れず、まだまだ「ファクタリングとは?」と概要や仕組みをよく理解されていない経営者様も少なくはないはずです。
この記事ではファクタリングの種類や、契約方法を含めた仕組みについて詳しく解説させていただきます。
「ファクタリングに関して興味はあるが、よくわからないから利用を躊躇している」という経営者様は、この記事を最後までお読みいただければ幸いです。
ファクタリングとは売掛債権を売却して現金化する手段
ファクタリングとは、売掛債権を「ファクタリング会社」と呼ばれる買取業者に売却して現金化する資金調達方法です。
また公的機関の見解として、金融庁の公式ホームページにはファクタリングについて以下の様に記載されています。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
引用元:金融庁
上記の文章をお読みいただければ、ファクタリングによる売掛債権の現金化を国も認めていることがおわかりになるはずです。
またファクタリングは融資における「貸金業法」や「利息制限法」のような法規制はありませんが、「民法第466条(債権の譲渡性)」や「民法第555条(売買)」などが法的根拠になります。
ファクタリングの種類
実はファクタリングと呼ばれるサービスは1つではなく、選択するサービスを誤ってしまった場合には、期待していたような効果が得られない可能性があります。
大きく分けて以下に記載する2つのサービスに分けられますが、どちらも会社経営において大きな効果を得られる期待が高いのは事実であり、概要を正しく理解して活用していただくことが大切になります。
- 保証型ファクタリング
- 買取型ファクタリング
ここからは「保証ファクタリング」と「買取ファクタリング」について、サービスの概要や注意点、毒帳のまとめなどをご紹介させていただきます。
保証型ファクタリング
「保証ファクタリング」を一言で説明させていただくと、「売掛債権の回収が不可能になった際の保険的なサービス」となります。
保証ファクタリングに加入していれば、売掛先が倒産するなどして売掛債権の決済が不可能となってしまった際にも、契約時に定められた条件に基づき保証を受けることができるようになります。
しかし保証を受けるためには、審査によって決定された保証料を支払う必要があり、売掛先の信用が低いと判断された場合には保証料が高額になったり契約が行えなくなったりする可能性は否定できません。
また保証ファクタリングによって保証が受けられるのは、売掛先の破産や会社更生の手続きが行われた際など支払いが不可能と判断される状況が基本ですが、申込先によっては支払いの遅延にも対応可能な場合もあります。
保証ファクタリングの特徴などをまとめると以下のようになります。
- 「保証ファクタリング」とは売掛債権にかける保険的なサービス
- 保証料が必要であり、売掛先の信用次第では、保証料が高額になったり審査落ちする可能性がある
- 保証会社による与信調査の結果を「与信管理」に活かすことが可能であり、「与信管理のための情報収集の外注」に近い効果も得られる
買取型ファクタリング
「買取ファクタリング」は、一般的に「ファクタリング」と呼ばれているサービスであり、決済日前の売掛債権を売買契約によって現金化する事業者向けの資金調達方法を指します。
融資でないことから負債額を増加させることがなく、売掛先の信用力を重視する審査基準によって赤字経営や債務超過の企業でも審査通過が可能など、買取ファクタリングは融資に頼った資金繰りの問題点を解消可能な資金調達方法です。
買取ファクタリングを利用する際には手数料が発生し、債権の買取を実行する際に手数料を差し引いた形で現金化されるのが通常です。
また法人・個人事業主問わず利用できる期待が高いものの、申込先によっては利用を法人のみに限定している場合があり、個人事業主やフリーランスの方は注意が必要です。
また決済日前の売掛債権が買取対象となることが前提であり、決済日を過ぎた不良債権は買取対象とはなりませんが、2020年の民法改正によって将来的に発生が見込まれる「将来債権」も売却可能となりました。
ただし将来債権の買取に対応できるファクタリング会社は、まだ多くはありません。
- 「買取ファクタリング」は売掛債権売却によって早期現金化を行なうサービス
- 売掛先の信用力が十分にあれば、赤字経営や債務超過の企業も審査通過が可能
- 決済日を過ぎた不良債権は買取対象外、今後発生が予想される「将来債権」は法的にはファクタリングに利用可能
ファクタリングの仕組み
ファクタリング(=買取ファクタリング)による資金調達の流れは、融資と比較して複雑ではありません。
しかしファクタリングは、「売掛先を含めた契約手続き」を行なうか否かによって、以下の2つの契約方法に分けられる点には少し注意が必要です。。
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
この2つのどちらを選ぶかは、基本的にはファクタリングを資金調達に活用しようとお考えの企業に選択していただけます。
ですが、選択した契約方法によって売掛債権を現金化するまでの仕組みに違いが発生するため、それぞれの手続きの特徴や注意点などを正しく理解して選択していただく必要があります。
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
資金調達スピード | 即日現金化可能 | 数日(売掛先の対応次第) |
審査通過のしやすさ | 3社間ファクタリングには劣る | 審査通過しやすい |
手数料相場 | 10%~30% | 2%~10% |
債権譲渡登記の必要性 | 申込先によっては必要 | 不要 |
上記させていただいたのは、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いをまとめた表です。
売掛債権の現金化を行なうという働きは同じですが、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングには様々な違いがあることがおわかりいただけるはずです。
ここからは、2つの契約方法の概要や資金調達に活用した際のメリット・デメリットを詳しく解説させていただきます。
2社間ファクタリング
「2社間ファクタリング」は売掛先への通知などを行わず、ファクタリング会社との間だけで手続きを進める契約方法です。
- 短時間で売掛債権を現金化できる期待が高く、即日での資金調達も実現可能
- 売掛先への通知を行わないため、ファクタリングの利用を売掛先に知られにくい
- 3社間ファクタリングと比較して審査は若干厳しめに行われることが多い
- 手数料相場は10%から30%と3社間ファクタリングより高め
- 債権譲渡登記が必要になる場合がある
2社間ファクタリングには上記したような特徴があります。
短時間での資金調達が実現可能であることは、2社間ファクタリングを利用する際の最大のメリットともなり、今すぐにでも現金が必要という状況にも役立ちます。
またファクタリングの利用を売掛先に知られることで経営不振が疑われるのではと不安を感じてしまう場合も、売掛先を契約手続きに含めない2社間ファクタリングであれば、売掛先にファクタリングの利用を知られる可能性はほぼありません。
ただし売掛先が売掛債権の売却を承認していないことで、債権の二重譲渡などトラブルが発生するリスクが高まると考えられることから審査が厳し目に行われ、手数料も3社間ファクタリングと比較して高めに設定される可能性が高まります。
また債権の二重譲渡などへの対抗手段として、申込先によっては「債権譲渡登記」が必要になる場合があります。
債権譲渡登記を行なう場合、司法書士への報酬などの費用が発生するだけでなく、資金調達スピードにも影響が出ることが考えられます。
ですが債権譲渡登記が留保可能なファクタリング会社を選んでいただくことで、この問題は解消可能となります。
3社間ファクタリング
売掛先に対して通知を行い承諾を得た上で売掛債権の売却を行なうのが、「3社間ファクタリング」です。
そして3社間ファクタリングには以下のような特徴があります。
- 2社間ファクタリングと比較して審査通過できる期待が高い
- 手数料が引くなりやすい(手数料相場2%から10%)
- 売掛債権を回収しファクタリング会社へ支払う手間が省ける
- 売掛先の対応が資金調達スピードに大きく影響し、即日債権現金化は難しい
- ファクタリングの利用に関して売掛先からの理解が必要
売掛先への通知を行い承諾を受けるのが基本となる3社間ファクタリングは、債権の二重譲渡や債権代金の持ち逃げなどのトラブルが発生しにくい契約方法であり、審査通過のしやすさや手数料の低さが期待できます。
また2社間ファクタリングでは売掛債権の決済後、支払われた代金を一旦受けとりファクタリング会社へ支払う手間が発生しますが、3社間ファクタリングでは売掛先から直接ファクタリング会社へ支払いが行われるため、手間を削減することができます。
しかし売掛先が手続きに加わるため2社間ファクタリングと比較して資金調達に時間がかかる傾向があり、数日から一週間程度の時間的余裕が必要になります。
また売掛先にファクタリングの利用を知られることは避けられないため、状況次第では企業間の関係性へ悪い影響が出ないかの見極めや、売掛先への事前説明が必要になるかも知れません。
ファクタリングに関するよくある質問
ファクタリングに違法性はありますか?
給与ファクタリングについて言及してください
ファクタリングそのものに関しては、金融庁の公式ページにも「事業者の資金調達の一手段」との記載があり、「法的的には債権の売買契約(債権譲渡契約)」とも書かれていますので、違法性に関しては心配ありません。
またファクタリングは債権の譲渡を認めている「民法第466条(債権の譲渡性)や「民法第467条(指名債権の譲渡の対抗要件)」が法的根拠となっており、「民法第555条(売買)」に基づいた契約が行われます。
しかしファクタリングと名についていても「給与ファクタリング」は違法性が高いため注意が必要です。
給与ファクタリングは個人が保有する「賃金債権(労働者が使用者から賃金を受け取る権利)」を買取り現金化するとうたった行為です。
しかし労働基準法において賃金は使用者から労働者へ直接支払うと定められており、資金移転のシステムを有すると判断される給与ファクタリングは、貸金業に該当すると考えられています。
ですが多くの給与ファクタリングは賃金債権の「買取」とうたっており、貸金業登録を行っていない闇金融が関係している危険が非常に高くなっています。
そのような場所を利用した場合、法外な利息請求や強引な取立てが行われる危険があるため、給与ファクタリングは利用すべきではありません。
銀行のファクタリングと民営のファクタリングの違いは?
ファクタリングは運営している企業や親会社によって、「銀行系・ノンバンク系・独立系」の3つに分けることができます。
銀行系ファクタリングは名前の通り、銀行やその関係の企業が行っているサービスとなります。
ノンバンク系は消費者金融や信販会社など銀行以外の金融会社によるファクタリングであり、独立系は金融機関が関係しない売掛債権の買取を専門的に行っているファクタリング会社となります。
銀行系 | ノンバンク系 | 独立系 | |
審査の厳しさ | 厳しめ | 中間 | 柔軟 |
資金調達スピード | 数日から数週間 | 数日から1週間程度 | 即日資金調達可能 |
手数料 | 低い | 中間 | 若干高め |
債権譲渡登記の必要性 | 高い | 申込先次第 | 低い |
償還請求権の有無 | 申込先次第 | 申込先次第 | 不要 |
上記させていただいたのは「銀行系・ノンバンク系・独立系」を比較した表です。
銀行系は利用する際の安心感が非常に高く、手数料が低く設定される期待も高くなります。
しかし銀行系の多くは2社間ファクタリングに対応しておらず、審査基準が厳しめで時間もかかりやすい傾向があるという点はデメリットにもなり得ます。
また銀行系では、売掛先が倒産するなどし債権回収が不可能になった際には責任を背負うことになりかねない、「償還請求権あり(ウィズリコース)」での契約となる可能性もあるため注意が必要です。
独立系は資金調達スピードに優れており、即日での売掛債権現金化に対応できる場所も少なくありません。
また柔軟な審査も特徴の1つであり、銀行系ファクタリングが利用できなかったという企業も独立系なら利用できる期待は十分にあります。
そしてノンバンク系は、銀行系と独立系の間に位置する存在とお考えください。